本年度の研究実施計画に基づき、以下に事項について検討した。 1.塩基存在下、アルケニルセレノニウム塩と活性メチレンカルバニオンとの反応は、シクロプロパン誘導体を与えた。反応機構を詳細に検討した結果、活性メチレン化合物の電子求引性基の少なくとも1つがケトン基の場合、Michael-Favorskii型の転位を起こしビシナル位に、一方活性メチレン化合物がジエステルの場合にはジェミナル位に2つの電子求引性基を有するシクロプロパン誘導体が生成した。市販の活性メチレン化合物には限りがあるため、より応用性を拡大させる目的で、Claisen縮合により系内で直接活性メチレンカルバニオンを発生させることより反応が開始するClaisen-Michael-Favorskii型連続反応を開発した。アルケニルセレノニウム塩とエノラートアニオンとの反応を行い、この場合もFavorskii型の転位を起こすことを見出した。次に不斉補助基を有するカルバニオンとのジアステレオ選択的シクロプロパン化反応を行った。オキサゾリジノン誘導体を不斉補助基として有する活性メチレンカルバニオンとアルケニルセレノニウム塩との反応はジアステレオ選択的に進行した。 2.(2R)-10-(メチルセレノ)イソボルネオールとフェナシルブロミドとの反応より光学活性セレノニウム塩を1:1.5のジアステレオマー混合物として得た。これを塩化メチレン中水酸化リチウム存在下p-ニトロベンズアルデヒドと室温で反応させたところ、トランス-オキシラニルケトンが84%で生成したがエナンチオ選択性はわずか4%eeであった。次に10-d-カンフィル基を置換基とするC_2対称セレニドを触媒とし、水酸化リチウム存在下フェナシルブロミドとp-ニトロベンズアルデヒドとの反応を行い、オキシラニルケトンを50%、29%eeで与えた。
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