我々は安価な酒石酸をキラル源とする新しい4級アンモニウム塩を設計、合成しPTCとしての機能を検討した結果、本触媒が高い触媒活性を有することを見出した。特に触媒的不斉マイケル反応において最高77%eeを達成することに成功した。この触媒群は、その合成の過程で様々な置換基の導入が可能であるため、各基質における最適の反応場を提供することができる。その結果、まだ初期段階ではあるが同様の不斉アルキル化反応でもエナンチオ選択的な反応が進行することも見出している。種々検討の結果、本触媒の不斉誘起能は触媒に含まれる芳香環に大きく依存しており、遷移状態におけるπ電子の相互作用が示唆されている。さらに、類縁体の合成によって触媒骨格中で3、4位のアルキル側鎖が重要な役割を担っていることも見出した。上記の実験結果は次世代のPTCを創製する上で有用な知見となりうる。さらにジアゾエステルを用いるアルドール反応についても検討した。ジアゾ化合物は爆発性を有するが、それらの中間体を単離精製することなくワンポットで化学的に安定なジアゾエステルに導く一般性の高い方法論を確立した。同反応系にアルデヒドを添加すると速やかにアルドール反応が進行することも見出した。さらにキラルPTCを用いて不斉アルドール反応へと展開したところ、最高で74%eeの不斉収率まで向上した。本反応機構には特異なレトロアルドール反応が関与していることも突き止めており、詳細なメカニズムの解明へ向けて大きな足掛かりを得ることができた。今後はこれら結果を基に、様々な反応系への応用を展開する予定である。
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