これまで我々が合成してきた無脊椎動物由来糖脂質の中で、フトミミズ及びブタ回虫からホスホコリンを含有する糖脂質があり、それぞれヒスタミン遊離阻害活性、IL-8誘導活性について測定してきた。一方植物由来の多糖体には、Bリンパ球幼若活性や腸管免疫調節活性を持つものがありそのモデル化合物を合成しその活性を調査してきた。しかしいずれもその活性は微弱なものであった。今回、さらにそれらの活性増強を目指して、マルチバレントな構造を有する糖クラスターの合成を試みることにより、活性発現のための最小有効単位の構造を検討した。従来の糖クラスターは、デンドリマータイプの合成が数多く行われているが、我々は、直鎖状のクラスターコアから糖鎖を分岐させた櫛状クラスターの合成を検討してきた。直鎖状のコアは、さらに別のコアと結合させることで2次元的、3次元的な広がりを持たせることができるため、糖鎖認識における、より最適な構造を類推する上でも期待がもたれると考えている。 そこでまず、糖にガラクトース誘導体を用いて新規糖クラスターの合成を行った。β-アラニンを出発物質としてN-carboxymethyl β-alanine誘導体を合成し、糖鎖ユニットと縮合してその後アミノ基遊離としたものをC末糖クラスターユニットとした。次にこのユニットのアミノ基の保護基をBoc基に変換後、カルボキシル基遊離としたものをN末糖クラスターユニットとした。N末糖クラスターユニットとC末糖クラスターユニットを縮合し、二手に分けそれぞれC末、N末を脱保護した化合物を縮合しテトラマーに導いた。また、N末を脱保護した糖鎖ユニットを縮合してトリマーを合成した。さらにヘキサマーまで導いた。このようにβ-アラニンのペプチド鎖のNより分岐した糖鎖を増やしていき、櫛状クラスターに導いた。現在ホスホコリン含有糖鎖について検討中である。
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