研究概要 |
本研究はエステル部を結合部位に含むトリエン化合物の効率的な分子内Diels-Alder反応の開発を目的とする。すなわち、エステル化合物はカルボニル酸素とエーテル酸素の双極子モーメントの反発とエステル基に結合する置換基の立体反発によりtransoide配座が有利とされている。このため、1,3-ジエン部分とジエノフィル部分がエステル部を介して結合するトリエン系の分子内Diels-Alder反応などは効率的に進行しない。この問題点に対してエステル基の2つの酸素原子に配位可能な2点配位型ルイス酸が設計できれば、(1)反応に有利なcisoide配座の形成に加えて、(2)2点配位によるジエノフィル部位の活性化により、分子内反応は効率的に進行するものと考え、詳細な検討を行った。 申請者は、種々のタイプのルイス酸について検討を重ねた結果、トリフルオロメタンスルホンアミドとMe_2AlClから生成するルイス酸を用いることにより、種々の置換基を有する3,5-ヘキサジエニルアクリル酸誘導体の分子内Diels-Alder反応が極めて穏和な条件下で、高収率、高立体選択的に進行することを見いだした。また、この反応で用いたルイス酸は、同様なcisoide配座を有するα,β-不飽和ラクトンの分子間Diels-Alder反応に対して有効な触媒となりうると考え、今後検討していく予定である。 さらに、申請者は、Et_3Bをラジカル開始剤とするブロモ酢酸エステルのアルケンへのラジカル付加反応が、Me_2AlClによって速やかに進行することを見い出している。上述した2点配位型ルイス酸のコンセプトの展開として、α-ブロモカルボン酸エステル誘導体の分子内ラジカル付加反応について現在検討している。
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