化学的に不活性なC-H結合をC-C結合へ変換する触媒的不斉合成は、ほとんど成功例が無く、その成功の代表は酒井らと村井らの例である。酒井ら及び村井らの場合は共に、五員環形成のみに適用可能であり、六員環形成の場合、目的の反応は進行しない。ごく最近、Junらは触媒量の2-amino-3-methylpyridine(1)とRh錯体を用いてbenzylideneaniline(2)と1-hexene(3)を反応させ、N-phenyl-N-(1-phenylheptylidene)amine(4)を得ることに成功している。つまりこの反応は、1と2とのトランス-イミノ化がおこり、N原子のRhへの配位により、C-H結合の酸化的付加が起きる。そして、続くオレフィンの挿入、還元的脱離、続くanilineとのトランス-イミノ化により、4を与えると共に1が再生する。ただし、この反応は末端オレフィンとのみ進行する。申請者は上記Junらの系を基に、触媒的不斉C-H結合活性化反応の開発を計画した。つまり、分子内反応への適用し、不斉配位子を用いることにより、不斉反応への展開を計画した。分子内反応ゆえ、内部オレフィンに対しても、目的の反応が進行するものと考えた。実際、アキラルな条件下、分子内閉環反応の検討を行ったところ、閉環反応は進行し、五および六員環生成物を中程度の収率で与えた。注目できる点は、酒井らの系では成し得なかった六員環形成反応も進行するということである。
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