研究概要 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAの蔓延は,対感染症薬剤療法への脅威となっている.MRSAは,耐性に必須なペニシリン結合蛋白質の遺伝子mecAを有するとともに、組換え酵素類縁の遺伝子ccrAおよびccrBをも有している.これらの遺伝子によりコードされるCcrAおよびCcrB蛋白質は,耐性遺伝子カセットを部位特異的に切り出し,挿入する働きを持っており、薬剤耐性が急速に蔓延する一因となっている. 研究代表者は,耐性遺伝子組換反応がどのような三次元構造によって行われるのか明らかにするため,Ccr蛋白質の結晶化試料の発現と精製を行った.黄色ブドウ球菌preMRSA株N315ゲノムDNAをテンプレートとしてccrAおよびccrB遺伝子を増幅し,pET-17bベクターに組み込んだ.得られたプラスミドを用いてλDE3溶原性をもつ様々な大腸菌株を形質転換し,発現株を得た.菌株によって,Ccr蛋白質が菌体破砕液の上清画分に得られる場合と,沈殿画分に得られる場合があった.また,上清画分に得られても分子量10MDa以上の高分子量体を形成してしまう問題があった.そのため,CcrAはN末端側とC末端側に分けて発現させた.現在,得られた試料を用いて結晶化を行っている.CcrBは,RNA複合体として精製できたので,耐性遺伝子複合体の末端に相当する2本鎖DNA存在下でRNaseA処理したところ,2量体と思われる画分が得られた.
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