研究概要 |
高分子側鎖にオリゴDNAを結合させたDNAコンジュゲートを用いるキャピラリー電気泳動は遺伝子配列内の1塩基変異に基づく多型(SNP)解析法として有用であることが、近年、明らかとなった。本研究はメカノケミカル固相重合法によりDNAコンジュゲートを構築し、より高分離能のDNAコンジュゲートの開発を目指すものである。本年度はその基礎的知見を得るため、メカノケミカル固相重合法とラジカル開始溶液重合法により、平均分子量および分子量分布の異なる基幹高分子を合成した。そして、得られた基幹高分子と5'-アミノリンカーオリゴDNAとの反応によりDNAコンジュゲートを構築し、キャピラリー電気泳動によるモデルオリゴDNAとそのSNP体との分離について検討した。 アクリルアミドとメタクリロイルスクシイミドの共重合体(Poly)をラジカル開始溶液重合とメカノケミカル固相重合により合成した。ラジカル開始溶液重合では分子量190,000の多分散性のPoly(190)が得られ、メカノケミカル固相重合では分子量10,000の単分散性の分子量分布を示すPoly(10)が得られた。Poly(190)を粉砕することにより分子量12,000のやや多分散性のPoly(12)を得た。Polyと5'-アミノリンカーオリゴDNAとを反応させたところ、いずれのPolyにおいてもオリゴDNAの担持率は0.03mol%であった。 Polyと5'-アミノリンカーオリゴDNAとから合成したDNAコンジュゲートをキャピラリー内に導入し、モデルオリゴDNA (PM)とそのSNP体(SN)の混合物を注入し、キャピラリー電気泳動を行った。いずれのDNAコンジュゲートを用いてもPMとSNとを良好に分離することができたが、分子量の大きいPoly(190)のDNAコンジュゲートは、他のものに比べて、検出されるまでの時間が長くかかり、分子量の違いによる影響が認められた。現在、重合法の違いによる分離能への影響や、変異の位置の違いによる分離への影響について検討を進めている。
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