研究概要 |
CYP2C12遺伝子は、雌ラットの肝臓に発現しているが、雄ラットの肝臓には発現していない。我々は、成長ホルモンによるCYP2C12遺伝子の発現調節機構を解析する手段として、肝臓にDNAを直接注入するダイレクトDNAインジェクション法を確立した。この方法を用い、成長ホルモンに応答するエンハンサーを同定した。スーパーシフトアッセイによりこの配列にはSTAT5が結合することを明らかにした。そこでSTAT5が雌性ラットのCYP2C12遺伝子に作用できるか否かをクロマチン構造に着目し,さらに解析した。雄および雌ラットの肝臓におけるCYP2C12遺伝子のプロモータ領域およびSTAT5結合部位のクロマチン構造をDNaseI hypersensitive assayにより解析した結果,雌ラットの肝臓では,プロモータ領域とSTAT5の結合部位にDNaseI高感受性部位が存在していた.一方,雄性ラットの肝臓では,それらの領域にDNaseI高感受性部位が認められなかった.興味深いことに,上流-3kb付近に雄性ラット特異的なDNaseI高感受性部位が存在していた.さらにヒストン脱アセチル化酵素を阻害するトリコスタチンAを雄性ラットに投与したところ,CYP2C12の発現が回復することが明らかとなった. 以上の結果から,CYP2C12遺伝子の性特異的な発現調節は,クロマチン構造の違いによって引き起こされている可能性が推測された. 今後は,雄性ラット特異的なDNaseI高感受性部位に結合する転写因子について解析する予定である.
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