牛胎仔血清のエーテル抽出物中より発見した分子量382の環状ジテルペノイドであるセロフェンド酸について、グルタミン酸神経毒性に対する有効濃度および作用機序を培養大脳皮質ニューロンを用いて検討した。セロフェンド酸は1nM以下という非常に低い濃度からグルタミン酸神経毒性を抑制した。また、高濃度のグルタミン酸の短時間投与によるネクローシスのみならず、低濃度のグルタミン酸の長時間投与によるアポトーシスに対しても保護作用を発現した。培養中脳ドパミンニューロンおよび培養脊髄ニューロンにおいても、それぞれ6-ヒドロキシドパミンおよびグルタミン酸神経毒性に対して検討したところ、セロフェンド酸は保護作用を発現した。したがって、セロフェンド酸は大脳皮質以外の中枢神経系でも保護作用を発現することが示唆された。また、セロフェンド酸の神経保護作用機序に関する解析は培養大脳皮質ニューロンを用い検討した。グルタミン酸受容体機能に対する影響についてはパッチクランプ法を用いて電気生理学的な検討を行ったところ、セロフェンド酸はグルタミン酸受容体機能に影響を与えなかった。NOラジカルや活性酸素との反応については電子スピン共鳴法を用いて検討した。セロフェンド酸はNOラジカルとの反応は見られなかったが、ヒドロキシラジカルの生成を抑制した。したがって、セロフェンド酸はNO以外のラジカルとの反応によりNOを介するグルタミン酸神経毒性を抑制していることが示唆された。マススペクトリー法を用いた簡易定量法による胎仔期および成熟期のウシの血清および臓器中のセロフェンド酸の含量の測定は現在進行中である。
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