研究概要 |
ニワトリBリンパ細胞株DT40を用いて,非相同組換えへの関与が示唆される遺伝子の破壊株(ホモ変異株)をジーンターゲティング法により作製し,解析を行った. 1.DNA ligase IV:ホモ変異株において,ランダムインテグレーション頻度が著しく低下していること,また,これによりジーンターゲティング効率が上昇していることを明らかにした.これらの表現型はKu70遺伝子破壊株においても同様であった.したがって,DNA ligase IVやKuに依存した非相同組換え(エンドジョイニング)がランダムインテグレーションの主要機構であり,これを抑制することでジーンターゲティングを効率良く行える可能性が示された. 2.DNA ligase III:ホモ変異株が取得できなかったため,条件変異株作製の準備を進めた.また,ヒトNalm-6細胞を用いてジーンターゲティングを行い,ヘテロ変異株を取得することができた. 3.FEN-1:ホモ変異株を用いて,ランダムインテグレーションにおけるFEN-1の役割について調べた.また,DNAポリメラーゼβとの二重破壊株の作製を行った.予想に反して,この二重変異株は生育可能であったことから,未知の塩基除去修復経路が存在する可能性が示唆された. 4.DNAポリメラーゼβ:ホモ変異株の取得を行い,この変異株がアルキル化剤に対して高い感受性を示すことを明らかにした.また,この株における組換え頻度を調べるための予備実験を行った. 5.DNAトポイソメラーゼ(トポ) IIα:ヘテロ変異株において,VP-16やICRF-193等のトポII阻害剤に対する感受性が低下していることを証明した.また,DNA ligase IVやKuを欠損した細胞株トポII阻害剤に対して高い感受性を示すことを見い出した.これは,トポII活性異常により生じるDNA損傷の修復に,DNA ligase IVやKuが重要な役割を果たしていることを示唆する.
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