研究概要 |
脳微小血管内皮細胞および周皮細胞の細胞培養系を用いて,線溶蛋白(組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),ウロキナゼー型プラスミノーゲンアクチベーター(u-PA)およびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1))の発現と放出量の変化およびフィブリンザイモグラフィーによる線溶活性を指標として,トロンビンの作用について検討し,以下の知見を得た。 1.脳微小血管内皮細胞線溶蛋白に対するトロンビンの作用 脳微小血管内皮細胞において線溶蛋白が発現していることが示され,トロンビンに曝露するとすべての線溶蛋白の放出が促進された。その結果トロンビンに曝露したときの線溶活性は内皮細胞では上昇することが示された。 2.周皮細胞線溶蛋白に対するトロンビンの作用 周皮細胞についても線溶蛋白を発現していることが示され,内皮細胞と比較するとt-PAおよびu-PA放出レベルが低いことが示された。トロンビンに曝露するとt-PAおよびu-PAの放出には影響を与ずにPAI-1の放出だけが促進することが示された。その結果,線溶活性はトロンビン曝露によって周皮細胞では低下することが示され,このトロンビンによる周皮細胞PAI-1放出の促進は,PAR-1によって介在されていることが示唆された。 以上より,トロンビンによる線溶活性の調節は,脳微小血管内皮細胞では血管内腔の血栓除去に,周皮細胞では血管破綻の際の血栓の維持を通じた止血機序に寄与するものと推察される。
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