研究概要 |
1.B.cereus菌由来SMaseのHis151をAlaに置換した変異体には酵素活性が僅かに残るが,他のアミノ酸に置換した場合にはまったく活性が消失する.そこで,His151の役割を調べるために,H151Aの酵素反応パラメーターのpH依存性を調べた結果,His151は一般酸触媒として作用している可能性が示唆された.また,Zn^<2+>は本酵素の活性を強く阻害すると考えられてきたが,非常に低濃度では,SMaseを強く活性化することが明らかになり,Zn^<2+>によるSMaseの活性調節の可能性が示唆された. 2.SMaseによって加水分解されるリン酸エステル結合の酸素原子を炭素,窒素,および硫黄に置換した基質アナログを合成し,酵素活性に及ぼす影響を調べた結果,いずれのアナログも0.1mMで50%程度の阻害を示すことがわかった.また,硫黄アナログはSMaseによって加水分解されることも明らかになり,SH基の定量を利用して,酵素活性を測定できることがわかった. 3.これまで,SMaseの活性測定には市販で反応生成物が可視吸収を持つ合成基質を用いてきた.本研究では,本来の基質であるSMを用い,過酸化水素の定量を利用した簡便な活性測定法の開発に成功した.本法はSMaseのもう一つの基質であるリゾレシチン(Lyso-PC)を用いた活性測定にも応用できることから,Lyso-PCを用いた実験をこれまでの結果と比較し,基質特異性の詳細について明らかにする予定である.また,本法の発色試薬の検討を行うことにより,高感度な活性測定法を開発する予定である. 4.哺乳類由来中性SMaseについては,マウス由来のmRNAから増幅した遺伝子を発現ベクターへに組込み済である.今後は,これらの発現タンパク質の精製方法を検討する予定である.
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