研究概要 |
コンドロイチン硫酸(CS)は硫酸基の結合位置により構造多様性を獲得し、CS-DやCS-Eなどの多硫酸化CSは神経突起伸長促進活性や細胞接着制御機能を発揮する。CSの特徴的な硫酸化パターンを形作る硫酸基転移酵素の同定と厳密な基質特異性を明らかにすることは、生体におけるCSの硫酸化修飾の役割を解明する上で意義深い。特にCSの稀な硫酸化修飾であるGlcA-3硫酸やCS鎖とコアタンパク質を橋渡しする結合領域4糖(GlcA-Gal-Gal-Xyl)のGal-4硫酸の硫酸化に関わる硫酸基転移酵素は未だ同定されていない。本年度はCSの硫酸化修飾に関わる新規硫酸基転移酵素の同定を目標とし、本研究の過程で得られた硫酸基転移酵素群の基質特異性を詳細に調べた。 CS/DS(デルマタン硫酸)のGalNAc4位の硫酸化に関わる3種の硫酸基転移酵素(D4ST-1,C4ST-1,C4ST-2)の詳細な基質特異性 GalNAc4位やGlcA3位の硫酸化に関わる既知硫酸基転移酵素のアミノ酸配列相同性に基づいたデータベース検索によって得られた候補遺伝子の一つは、CSの構造異性体であるDSのGalNAc4位の硫酸化に関わる硫酸基転移酵素(D4ST-1)をコードしていた。そこで、CSのGalNAc4位の硫酸化を担う2種の酵素(C4ST-1,C4ST-2)と厳密な基質特異性を調べた。D4ST-1はDSに特徴的なIdoAに挟まれたGalNAc4位に硫酸基を転移し、C4ST-1はGlcAに挟まれたGalNAc4位に硫酸基を転移することが分かった。一方で、C4ST-2はIdoAに挟まれたGalNAcの4位やGlcAに挟まれたGalNAcの4位に同等の硫酸基転移活性を示すことが分かった。従って、これら3種の酵素はそれぞれ異なる基質特異性を持ち、生体内において、競合的に、または協調的にCS/DSの硫酸化を決定していると考えられた。
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