研究概要 |
平成14年度に行った検討から,以下に示す知見を得た. 1)トランスフェリン修飾リポソームの調製 リポソーム表面にトランスフェリンを共有結合させることで安定なトランスフェリン修飾リポソームを得ることができた. 2)酵素感受性リポソームの調製 既存のpH感受性リポソームの安定性を向上させる目的でPEG化脂質をその基剤に添加すると,pH感受性リポソームが本来有しているpH感受性が阻害されることが知られている.そこで,目的部位まではPEGの鎧をまとい,目的部位に到達すると速やかにPEGが表面から解離し,本来有しているpH感受性が快復するような機能性(酵素感受性)をリポソームに付加(ジスルフィド結合の付加)した.その結果,ジスルフィド結合の解劣に呼応してPEG鎖がなくなるとpH感受性が復活することが分かった.この結果を受けて,現在生体適応可能なペブチド配列の導入により酵素感受性リポソームの開発を試みている. 3)内封薬物の核内移行速度の検討 オルガネラ分画法により回収した核内の封入薬物移行速度を定量的に検討した.その結果,作用部位である核内への薬物の移行速度と効果の間には非常に良好な相関関係が見られ,作用部位へ薬物を速やかに送達しうるデバイスの開発が,封入薬物の高い薬理効果(効果と副作用の間の差)を得る上で需要であることが明らかとなった.
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