研究概要 |
I.カルレティキュリン(CRT)とリガンド糖鎖の相互作用解析 各種オリゴ糖鎖を用いてCRTとの相互作用のNMR解析を行った結果、CRTはGlc_1Man_9GlcNAc_2のなかでも特に非還元末端のGlcα(1-3)Manα(1-2)Manα(1-2)Man部分を認識しており、還元末端のGlcNAc残基は結合に関与しないことが明らかとなった。さらに非還元末端のGlc残基はα結合で連結していることが重要であり、これがβ結合の場合ではCRTに対する親和性が有意に低下した。 II.カルシウムイオンの結合に伴うCRTの高次構造変化 CRTのPドメインおよびCドメインを対象としてCa^<2+>結合部位の同定およびCa^<2+>の結合・解離に伴う高次構造変化をNMRにより解析した。その結果Pドメインは、アーム状の付け根部分(Ile191,Asp201,Ala206,Ile273,Ile277)においてCa^<2+>と結合することが明らかとなった。一方、CドメインはCa^<2+>の有無に関らず大部分がランダムコイル状態にあることが判明した。また、Ca^<2+>非存在下では、CドメインのCa^<2+>結合部位はレクチンドメインと相互作用をすることが判明した。 III.NMRによるCRT分子の動的構造解析 CRT分子の動的性質に着目してCRTのNMR解析を行った結果、Pドメインは分子の中で著しく高い運動性を有していることが明らかとなった。さらにCRTの基質認識機構を明らかにするため、免疫グロブリンY(IgY)をモデル糖タンパク質としてCRTとの相互作用解析を行った。その結果、IgYの結合に伴ってPドメインに由来するシグナルの線幅は広幅化するものの化学シフト変化は認められず先端部由来のシグナルはスペクトル中に依然として観測された。従って、標的蛋白質と結合した状態でもPドメインの先端部は高い運動性を保持していることが明らかとなった。
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