各種オリゴ糖鎖(Glcα(1-3)Man_9GlcNA_<C2>、Glcβ(1-3)Man_9GlcNA_<C2>、Man_9GlcNA_<C2>、Glcα(1-3)Manα(1-2)Manα(1-2)Man、Manα(1-2)Manα(1-2)Man、[1^<-13>C]Glcα(1-3)Man)を用いてカルレティキュリンとの相互作用のNMR解析を行うことにより、カルレティキュリンはGlc_1Man_9GlcNA_<C2>のなかでも特に非還元末端のGlcα(1-3)Manα(1-2)Manα(1-2)Man部分を認識していることを明らかとした。グルコース残基の結合様式が重要であることから、このグルコース近傍のコンフォーメーションをNMR法により詳細に解析することを試みた。そのため、安定同位体標識を施した糖鎖リガンド([1^<-13>C]Glcα(1-3)Man)とカルレティキュリンとをモル比で2:1で共存させ、糖鎖の結合・解離状態の化学交換を利用して転移核オーバーハウザー効果(TRNOE)を測定することにより、糖鎖リガンドのコンフォーメーションを解析した。スペクトル解析の結果、Glc H1、とMan H3、Glc H2間にTRNOEが観測されることが明らかとなった。Man H3、Glc H2由来のピーク強度の混合時間依存性から、プロトン間の距離を算出したところ、Man H3とGlc H2間の距離は約2.5Åあることが判明した。遊離状態における当該プロトン間の距離は、2.33〜2.50Åであることから、結合した状態にあっても糖鎖の立体配置は変化しないことが明らかとなった。さらに、カルレティキュリンに結合した状態のGlcα(1-3)Manのグリコシド結合の周りの二面角(φ、ψ)は-65°、+10°と見積もることができた。
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