研究概要 |
マウス肝可溶性画分に存在するセレノメチオニンのα,γ-位脱離反応を触媒する酵素(以下、セレノメチオニンγ-リアーゼとする)は硫安分画、Phenyl-Sepharose 6FF疎水性クロマトグラフィー、Sephacryl S-200 ゲルクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびPhenyl Sepharose HP疎水性クロマトグラフィーによって比活性が約1000倍上昇し、効率よく精製することができた。精製されたセレノメチオニンγ-リアーゼは分子量約160,000の4量体で、ピリドキサール5'-リン酸を補酵素とするピリドキサール酵素であることが示唆された。酵素を4℃で20日間保存しても活性の低下ははとんど認められなかった。酵素反応における至適pHは8.0、至適温度は50℃であった。このセレノメチオニンγ-リアーゼのL-セレノメチオニンに対するKm値は15.5mmol/Lであった。また、この酵素はDL-ホモセリン、DL-ホモシステインおよびSe-メチルセレノ-L-システインなども基質としたSe-メチルセレノ-L-システインが基質となったことから、本酵素はα,γ-位脱離反応だけでなく、α,β-位脱離反応も触媒することが示唆された。一方、メチオニンやD体のセレノメチオニンは基質とならなかった。セレノメチオニンγ-リアーゼのpeptide mass fingerprinting解析およびMS/MS測定による内部アミノ酸配列解析から、これはシスタチオニンy-リアーゼ(EC4.4.1.1)であることが判明した。本研究によって、シスタチオニンγ-リアーゼがセレノメチオニンのα,γ位脱離によるメチルセレノールへの代謝に寄与することを初めて明らかにすることができた。今後、セレノメチオニン代謝におけるこの酵素の生理学的な役割を解明する必要があると考える。
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