研究概要 |
本研究は、日本におけるバイオエシックス確立のための条件を現代医学の思想史ならびに制度史の観点から明らかにしようとするものである。そのために今年度は、前年度の研究--現代医学の制度化および1960年代末のアメリカに始まるバイオエシックスの成立過程にかんする研究--をふまえつつ、とくに日本の医学とバイオエシックスのあり方に焦点を合わせて研究を進めた。今年度の具体的な成果は以下のとおりである。 まず、一昨年イタリアにて開催された国際会議に提出したペーパーに加筆・修正をほどこし、これを"The Welfare State and the Task of Bioethics : Rethinking Japanese Bioethics"としてBulletin of the College of Liberal Arts and Sciences Tokyo Medical and Dental University, no.34 (2004)に発表した。この論文では、日米のバイオエシックスの成立過程を比較対照しつつ、日本にバイオエシックスを確立するために必要な条件が検討されている。また、日本における医学の制度化とバイオエシックスの成立過程にはらまれる問題を歴史的に検証し、「日本の生命倫理における<68年問題>--東大医学部闘争と和田移植」(中岡成文編『応用倫理学講義1 生命』、岩波書店、近刊)にまとめた。さらに現在、この二年間の研究成果を総合した著書を準備中であり、平成16年中に八朔社から『いのちと社会』(仮題)を、平成17年初頭には風行社から『生命・科学・政治』を出版する予定になっている。 この他にも今年度は、聖学院大学総合研究所の依頼により「<生命>とグローバリゼーション」と題した講演を行うなど、研究成果の社会への還元にも努めた。
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