X線像着色加算処理技術は、一連のX線像に着色および加算処理を施し、変化のない大部分の背景は通常のX線像と同じモノクロで表示し、病変部などの変化がある部分だけをカラーで表示する技術である。これら着色・加算という新しい画像処理技術をIVR検査に応用することにより、検査時間短縮および大幅な医療被曝の低減を目指す。これまでのファントムを用いた研究で、参照画像としてこの着色加算像を用いると、読影時間の短縮、病変の検出能および診断の正確性が向上することを報告した。本年度は、このディジタルX線像着色加算処理システムの臨床応用を目指し、臨床データをより効率的に画像を収集・転送する方法、臨床画像に対する有効な画像処理および効果的な画像の表示方法に関する研究を実施した。その結果、臨床データを現有の計算機へ転送するには、現有の装置の規格が古く、その上画像フォーマットが独自でDICOMネットワークに対応しておらず直接データを取り出すことは困難である。しかしビデオ信号を利用してデータを取り出し計算機に転送するシステムを構築することができた。ただこのシステムでは、画像処理が施された画像しか取り出せない制約がある。一方、臨床画像に対する有効な画像処理および表示方法に関しては、臨床写真を用いて胸部腫瘤陰影の検出に関する読影実験を行った。従来の読影法、参照画像としてすでに商品化されている経時差分像を用いた読影法、参照画像として着色加算像を用いた読影法の3種類の読影方法で、腫瘤の検出能と読影時間の比較を行った。その結果、検出能について着色加算像を参照面像として用いた読影法では、他の読影法と同等か若干の向上が見られた。さらに、読影時間においては明らかな短縮・言い換えると作業効率の改善が見られた。これら臨床データによる読影実験からも、IVR検査の時間短縮の可能性が示唆できた。
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