現在急速に医療分野へ情報技術の導入(IT化)が進められている。それらの病院情報システムが本当に患者にとってメリットがあるのか、特に患者のQOLを向上させるかという点を明らかにするための患者の視点をとりいれた評価指標を開発するため、本研究を行うこととなった。 本研究では病院情報システムの中でも初期導入として採択されることの多い処方および検査のオーダリングシステムを対象としている。平成14年度から2年計画の初年度としては、調査対象病院の選定および調査項目の検討を行った。まず対象病院については、医学系雑誌「新医療」のオーダリングシステム設置病院一覧表から、オーダ項目として処方と検査が含まれている関東圏の200床から400床規模の病院の中から無作為に30箇所を選んだ。200床から400床としたのは、今後一番システム導入が見込まれる中規模病院をターゲットにした方が良いと考えたためである。さらに実際に調査をする上では10病院以下に絞り込む必要があるため、対象病院に調査協力の意思および対象となる高血圧や糖尿病治療を行っているかの確認のための郵便を送付した。 調査項目に関しては客観的項目と主観的項目とありえるが、本研究は患者の視点からの評価ということで、患者の主観からの評価項目を設定することにした。当初機能からの項目分けを考えたが、他の医療情報の専門家との討議の結果、病院情報システムの意義、すなわち「効率性(例:診察までの待ち時間や診察時間など)」、「正確性(処方内容の正確や事故防止対策など)」、「サービスの質(医療従事者の患者状態の把握、診療録への記載程度など)」といった3つの領域および総合的項目(患者の属性など)を問う項目を作成し、構成概念妥当性を見るうえで既に確立されたQOL調査票と比較する。これら実際の調査および解析は2年目に予定している。
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