現在急速に導入されている病院情報システムが患者にメリットがあるか、患者のQOLを向上させるかという患者の観点から評価する指標の開発が本研究の目的である。 最初の平成14年度で調査票のモデルを開発したことから、平成15年度では実際の患者を対象として調査を行い、その妥当性について吟味した。当初構成概念妥当性をみる上で疾患特異的な高血圧及び糖尿病に特化したQOL調査票の利用を考えたが、QOLの専門家と協議した結果、汎用性があり確立されたSF-36を薦められ、本調査票とSF-36を用いることにした。 対象病院として九州にあるオーダリングのみの500床規模の急性期中核病院に協力が得られ、平成15年12月に外来にて調査(面接)を実施した。対象者数は133名(男性51人(38%)、女性82人(62%))であった。年齢は10歳未満から80歳以上まで満遍なく得られた。抜粋を報告すると、システムにより情報の共有を不安に思う人は3割、医療連携にメリットがあると思う人が7割、安全面の向上は5割が同意していた。受診して良かったと思う患者は7割を超え、再来院も7割が希望しており高い評価が得られた。また病院の選択理由が近くだからという人は満足度が低く、医師の説明が理解できたという人ほど満足度は高かった。 SF-36については項目が多いことから対象者のうち5名のみ協力が得られた。その中でSF-36の項目「日常役割機能(身体)」や「活力」の項目で、本調査票の総合的評価と負の相関がみられた。対象が少数で横断研究のみの限られた結果であるが、QOLの指標とシステム評価の指標の方向性が独立である可能性や、縦断的調査によるQOLや評価自身の変化を捉える必要性が示唆され、平成16年度では規模の拡大及び同じ病院での再調査による比較を計画している。
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