内側血液網膜関門特異的に発現する遺伝子を解析するため、温度感受性SV40T抗原遺伝子導入トランスジェニックラットから樹立した条件的不死化網膜および脳毛細血管内皮細胞株(TR-iBRB細胞およびTR-BBB細胞)をin vitroモデルとして用い、両細胞株の発現遺伝子をdifferential display法を用いて解析することを目的とした。まず、TR-iBRB細胞およびTR-BBB細胞からtotal RNAを抽出し、逆転写反応を行った。次に24種類のupstream primerと4種類のdownstream primerを組み合わせた計67通りの1st PCR反応を行い、変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行い、TR-iBRB細胞およびTR-BBB細胞における発現遺伝子を比較解析した。TR-iBRB細胞もしくはTR-BBB細胞特異的にバンドが検出された遺伝子について2nd PCR、さらに塩基配列を解析してBLAST検索によって既知の配列との相同性を解析し、49の特異的発現遺伝子候補を得た。さらに、各候補遺伝子のmRNA発現特異性を確定させるため、各標的遺伝子に対して特異的primerを設計し、TR-iBRB細胞およびTR-BBB細胞に対してリアルタイム定量PCRを行った。その結果、TR-iBRB細胞とTR-BBB細胞間で発現量に2倍以上の差が検出された遺伝子を20種類得ることができ、うちTR-iBRB細胞に高発現する遺伝子数は8であり、最大で220倍の差が検出された。以上の結果から、BBBおよびiBRBのin vitroモデルであるTR-iBRBから特異的発現遺伝子を検出することができた。それら遺伝子は網膜独自の役割を果たす上で重要な役割を果たしている可能性が高いと考えている。
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