1線虫ドーパ受容体候補分子の解析 expression cloning法を用いてドーパの内向き電流を指標にしてドーパ受容体の同定を行った結果、ドーパ受容体候補分子(CeDOPAR)が得られた。抗CeDOPAR抗体を用いてCeDOPARの局在を解析したところ、線虫の咽頭筋においてシグナルが観察された。次に線虫の生理機能におけるドーパとCeDOPARの役割およびこれら分子の関連について検討した。ドーパ含有プレートを作製し、この上に線虫を移すと線虫の咽頭筋運動が増加した。一方、CeDOPARのRNAiを施した線虫では、ドーパ含有プレート上での咽頭筋運動の増加は見られなかった。これらの結果より、線虫においてドーパは咽頭筋運動の亢進を引き起こし、この生理作用にはCeDOPARが寄与することが示された。次にCeDOPARの受容体機能解析を行うために、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的実験を行った。チロシン、ドパミン、ノルアドレナリンおよびドーパ代謝産物であるDOPAC、TOPA(いずれも1pM-1mM)はCeDOPARを発現させた卵母細胞において応答を示さなかったが、ドーパ(1-100pM)は内向き電流応答を引き起こした。しかしこの電流応答は小さく、その発現頻度も低かった。そこで受容体の機能解析を行うために有効なリガンドの探索を行ったところ、ドーパ類縁体であるDOPSの酸化混合物が安定した内向き電流を引き起こす事を見出した。現在、DOPSの酸化混合物からCeDOPARを介した応答を引き起こす化合物の分離・同定を行っているところである。 2哺乳類ドーパ受容体の探索 ラット全脳、海馬、線条体および視床下部由来polyA(+)RNAを微量注入したアフリカツメガエル卵母細胞において、ドーパは応答を示さなかった。またビオチン標識ドーパリガンドを用いた哺乳類ドーパ受容体の探索を試みたが、ドーパにビオチンを標識する過程でドーパの構造変化が生じたため、この実験手法による探索は行うことができなかった。そこで上記のCeDOPARの研究結果より、DOPSの酸化混合物中に含まれる活性化合物を同定し、これをリガンドとし哺乳類ドーパ受容体探索を行うことを検討中である。
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