研究概要 |
アルドース還元酵素(AR)遺伝子のプロモーター上には転写因子Nrf2が認識するAREコンセンサス配列がパリンドローム状に配置しており,そのすぐ上流にはAP-l siteならびに高浸透圧に応答するtonicity response element(TonE)が存在しmultiple stress response region (MSRR)を形成している.本年度の研究において,MSRRを介したARの発現調節におけるNrf2の関与について検討をおこなった.TonE, AP-l, AREすべてを含む-1.06kb ARプロモーター領域を有するルシフェラーゼレポーターを用いた解析において,Nrf2の共発現によりARプロモーターの活性化が認められた.また,上記プロモーター領域を5'-上流より順次欠失させたレポーターを用いた解析の結果,TonEとAP-lの配列を欠失した場合にNrf2による転写活性化は消滅した.そこでTonEとAP-lを含む領域のみをSV40プロモーター配列を有するルシフェラーゼレポータープラスミドの上流に繋いだコンストラクトを作成し解析した結果,この領域のみでは転写活性化に不十分であった.そこでさらに下流のARE配列を含むコンストラクトについて解析した結果,十分な転写活性化が認められた.またTonE配列はNrf2に対する応答には直接関係なく,AP-l配列とAREの両方が必要であることがわかった.また,変異体を用いた解析の結果,2つあるAREのうち,下流側のARE1が必須であることがわかった.AP-lに結合する転写因子c-Junの共発現はNrf2による転写活性化を抑制した.一方,TonEに結合する転写因子TonEBP/NFAT5の共発現はNrf2による転写活性可能を相乗的に増強した.従って,これらの転写因子が相互作用してARの発現を調節することが示唆された.
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