研究概要 |
多用な生理機能を有する内因性モノアミンオキシダーゼ活性阻害物質イサチンがパーキンソン病治療薬として有用であるのではないかと考え,日本脳炎ウィルス(JEV)を用いてパーキンソン病モデルラット(JEVラット)を作製し,イサチン(100mg/kg, i.p.)1週間投与による運動機能,脳内カテコールアミン(CA)濃度ならびに免疫組織化学的変化について検討を行った. 1.パーキンソン病モデルラットの作製と病態 JEVラットの作製は,生後13日のラットにJEVを投与することにより行った.JEV投与後1週間毎に体重測定を行った結果,JEVラットでは健常対照ラットに比較して成長が1ヶ月目までは著しく遅れていた.しかしイサチン投与を開始する90日後においては体重の差はなく,外観的に両者に違いは見られなかった. 2.運動機能の評価 Pole-testにより測定したJEVラットの運動機能は健常対照ラットに比較して有意に低下していた.イサチン投与により健常対照ラットレベルまでの回復が見られた. 3.脳内CA濃度測定 脳7部位のドパミン(DA)濃度は,イサチン投与により線条体においてJEVラットの著しく低下しているDA濃度を有意に上昇させた. 4.免疫組織化学的検討 健常対照ラットに比較してJEVラットではTyrosine Hydroxylase陽性細胞の著しい減少が見られた.しかしイサチン投与によってその回復は認められなかった. 以上の結果から,イサチンはJEVラットの線条体DA濃度を上昇させ,運動機能を回復させたことから,パーキンソン病の治療薬としての有用性が示唆された. 今年度予定していた,病態が長期に渡るJEV投与180日後のモデルでのイサチンの効果については,現在モデルラット作成中であり,次年度報告予定である.
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