研究概要 |
多用な生理機能を有する内因性モノアミンオキシダーゼ活性阻害物質イサチンについて日本脳炎ウイルス(JEV)を用いてパーキンソン病モデルラット(JEVラット)を作製し,イサチン投与によるパーキンソン病治療薬としての有用性について報告してきた. 今年度は,これまでのJEV投与後90日のラット(90日ラット)の2倍の期間である180日後のラット(180日ラット)を用いて,そのモデルとしての有用性と合わせて検討を行った 1.180日ラットの作製と病態 生後13日のFischerラットの大脳皮質にJEVを投与しその後180日間飼育し実験に用いた.発育の過程で健常対照ラットに比較して体重及び外観的にも両者に差は見られなかった.Pole-testによる運動機能は90日ラット同様健常対照ラットに比較し有意に低下していた.線条体ドパミン(DA)濃度は,90日ラット同様著しく低下しており,海馬及び視床下部においても低下が認められ,組織障害や蛋白変性も見られ病態の進展が示唆された.更にTyrosine Hydroxylase (TH)陽性細胞の著しい減少も見られた. 2.イサチンの有効性 180日ラットにイサチン(100mg/kg, i.p.)1週間投与した結果,90日ラット同様に運動機能は健常対照ラットレベルまで有意に回復し,線条体DA濃度は高値を示す傾向にあった.TH陽性細胞も同様に著しい減少を回復させなかった. 以上の結果から,JEVラットは他のパーキンソン病モデルとは異なり,時間が経過しても病態が回復せず症状を持続または進行するモデルであることが明らかとなった.またイサチンは180日ラットにおいても線条体DA濃度を上昇させる傾向にあり,運動機能を回復させたことから,病態が進行した状態でも治療薬としての有用性が示唆された. 今後は本モデルラットを用いてイサチンと他のパーキンソン病治療薬と比較検討する予定である.
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