研究概要 |
内因性モノアミンオキシダーゼ(MAO)活性阻害物質イサチンとパーキンソン病との関連性についての検討として,本年度は既に臨床で用いられているMAO-B選択的阻害薬塩酸セレギリンを用いてイサチンと比較検討を行い次の結果を得た.なお,パーキンソン病モデルラットは,生後13日のF-344ラットに日本脳炎ウイルス(JEV)を投与し作製した.実験に用いるJEV投与90日後からイサチン(100mg/Kg)ならびに塩酸セレギリン(0.2mg/kg)を7日間腹腔内投与を行った.運動機能は薬物投与前後で測定した.運動機能測定後,脳を摘出し7部位のカテコールアミン(CA)濃度の測定した. 1.運動機能の評価 小川らのPolo-testにより測定した結果,健常対照ラットに比較して有意に低下していたJEVラットの運動機能がイサチン投与同様に塩酸セレギリン投与により健常対照ラットレベルまでの回復が見られた. 2.脳内CA濃度測定 脳7部位のドパミン(DA)濃度は,塩酸セレギリン投与により線条体においてJEVラットの著しく低下しているDA濃度を有意に上昇させた. 3.免疫組織化学的検討 健常対照ラットに比較してJEVラットではTyrosine Hydroxylase陽性細胞の著しい減少が見られた.しかし塩酸セレギリン投与によってイサチン同様その回復は認められなかった. 以上の結果,既に臨床で用いられている塩酸セレギリンが線条体のDA濃度を上昇させ,運動機能を回復させ,イサチンと同様の結果を示したことから内因性MAO活性阻害物質イサチンのパーキンソン病治療薬としての有用性が示唆された. 今後は病態が長期に渡るモデルラットの作製とそのモデルに対するイサチンの有用性についても検討を行う予定である.
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