研究概要 |
胃粘膜基底部微小循環観察法からのアプローチ 昨年度EPレセプターノックアウトマウスを用いた研究のためにマウスの胃粘膜基底部微小循環観察法を確立したが,やはり長時間の研究は不安定であり残念ながら今回は見送った. 粘膜傷害面積からのアプローチ 予めEP1-4の選択的アゴニストを脾動脈より逆行性に動注し,50%エタノール(EtOH)を胃内腔に投与し胃粘膜傷害を起こすとEP1により傷害が抑制された.PGE2を介するEtOH胃粘膜傷害抑制はEP1によるものである.我々の薬理学的研究で胃粘膜基底部微小循環の細動脈,細静脈にはEP1は存在しない.さらに胃粘膜のEP1レセプターはインサイツハイブリダイゼイションの研究で粘膜筋板に存在する事が判明している.他にEP1レセプターが胃に存在しないならば粘膜筋板を介する新しいメカニズムが存在する事になる. ラット胃平滑筋活動電位からのアプローチ 胃内腔持続灌流胃粘膜傷害作成モデルのラットの腺胃部前壁に双極電極を装着し,胃平滑筋活動電位を取ることが出来る.2cmH_2Oの圧で灌流すると活動電位が発生する.アダプティブサイトプロテクションに相当する1M NaClを胃内腔に灌流すると活動電位は抑制された.PGE2を脾動脈より逆行性に動注すると活動電位は抑制された.しかしPGI2の動注は活動電位を抑制しなかった.EP1-4の選択的アゴニストを脾動脈より逆行性に動注すると,EP1のみが活動電位を抑制したがEP2-4は抑制しなかった. まとめ アダプティブサイトプロテクションにおけるPGE2はEP1を介した胃平滑筋活動電位の抑制すなわち収縮の抑制によるメカニズムが存在すると考えられた.しかしアダプティブサイトプロテクションにおいてIPレセプターを介したニューラルエマージェンシーシステムのリンクもあり,どちらが重要かは現時点では判明しきれておらず今後の課題である.
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