研究概要 |
ICRマウスの脳各部位におけるGTP結合タンパク質β1サブユニット遺伝子(GNB1と略する)の発現強度についてメタンフェタミン長期投与後の変化を定量した。その結果、マウスにおいてメタンフェタミン投与初期(2時間)にGNB1発現量が有意に増加し、逆耐性形成に何らかの役割を果たしていることが示唆された(投稿中)。このコンディション下、基底核と機能連関が示唆されている前頭前野大脳皮質における細胞内情報伝達系を詳細に検討したところ、ヒスタミン刺激によるイノシトールリン脂質代謝回転が有意に減少することが判明した(BBRC,2003)。GNB1遺伝子量の変動が12時間以上継続していないこと、ヒスタミン刺激による情報伝達系の低下が可逆的であることから、ヒスタミン情報伝達系に関わる神経細胞の変性が原因ではないことが考えられた。この点について現在さらに組織学的(免疫染色)に評価している。他の情報伝達分子によるシグナル強度に対するメタンフェタミン長期投与による影響に関しては、グルタミン酸およびノルアドレナリンに関して検討を行っており、いずれもネガティブな成績を得ている。この点はコリナージック系についても検討を行う予定である。さらにアルコール依存モデルラットにおける情報伝達系変化との比較検討も行っている。 メタンフェタミン長期投与によるマウス自発運動量の変化については、特に夜間の自発運動量パターン(探索行動、それに付随するrearing運動など)が薬物投与群と対照群とで変化するかについて、科研設備備品費により導入した自動運動量測定装置を用いて現在詳細に解析を継続している。この現象とマウス脳内アミン含量との因果関係を中心に研究を進めるている。アミン含量定量には、HPLCをすでに立ち上げており、ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミンおよびセロトニンの細胞内代謝回転で評価しており、メタンフェタミン逆耐性形成後ドーパミンおよびセロトニン代謝回転が変化することを見いだした。
|