研究概要 |
(1)遺伝子発現変化:GTP結合タンパク質β1サブユニット遺伝子(GNB1と略する)の発現強度について、覚せい剤(メタンフェタミン)長期投与後の変化をICR系マウス脳部位において経時的に定量した。その結果、メタンフェタミン投与初期(2持間)にGNB1発現量が約150%有意に増加し、逆耐性形成に何らかの役割を果たしていることが示唆された。 (2)運動量変化:上記の投与コンディション下、マウス自発運動量の変化について検討した。特に夜間の自発運動量パターン(探索行動、それに付随するrearing運動)が薬物投与群と対照群とで変化するかについて、科研設備備品費により導入した自動運動量測定装置を用いて詳細に解析した。その結果、逆耐性形成は確認されたが、運動量増強による疲労蓄積現象は昼夜を問わず確認されないメタンフェタミン投与条件を設定することに成功した。本モデル動物は、疲労の影響を考えずにメタンフェタミンによる脳内アミン含量変化を測定できる利点がある(次項)。 (3)アミン含量変化:上記モデル動物の脳内アミン含量変化をHPLCで定量した。メタンフェタミン逆耐性形成後、線条体+側坐核および視床+視床下部においてドーパミンおよびセロトニン代謝回転が変化することを見いだした。変化量については脳部位特異性が見いだされた。 (4)薬物依存形成の分子基盤の共通性:メタンフェタミン逆耐性形成マウスにおいてヒスタミン刺激によるイノシトールリン脂質代謝回転が有意に減少することが判明したことから(H14年度実績)、アルコーール依存モデルラット(HAP, LAPラット)における情報伝達系変化との比較検討した。その結果、アルコール依存と覚せい剤依存の両モデル動物において、等しくヒスタミン情報伝達が皮質において有意に減少していることを見いだした。現在、この点についてヒスタミンと代謝物含量を詳細に定量している。
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