研究概要 |
抗腫瘍作用や強力な抗酸化作用を有することが報告されているビタミンE同族体のトコトリエノール(T3)やビタミンK_2の活性体であるビタミンK_2ハイドロキノンは水難溶性であり,薬物送達上の問題がある化合物である.本研究の目的は,イソプレニル基と水酸基を有するこれらの化合物を誘導体化することで,薬物送達上の問題を克服し,新規の抗癌薬や,脳疾患,心血管系疾患,肝障害,皮膚障害等の酸化的障害が原因となる疾患の予防薬,治療薬を開発することである. 平成14年度は,γ-T3のN,N-ジメチルグリシンエステル(γ-T3DMG)の細胞中への取り込みと親薬物への再変換性及び細胞増殖抑制作用をエストロゲン感受性と非感受性の2種類のヒト乳癌細胞を用いて検討した.γ-T3DMGは細胞中でγ-T3へと速やかに加水分解され,乳癌細胞増殖抑制作用を示した.また,γ-T3のイソプレニル側鎖が飽和のフィチル基であるγ-トコフェロール(γ-Toc)のN,N-ジメチルグリシンエステル(γ-TDMG)を合成し,γ-TDMGが静脈内投与によりγ-Tocを肝臓へ選択的に送達できるγ-Tocの水溶性prodrugとして機能できること,さらに,γ-TDMGは静脈内投与によりNa利尿因子であるS-γ-CEHCの体内レベルを上昇し維持できるS-γ-CEHCのtwo-step prodrugとして機能できることを明らかにし,論文として公表した.この結果は,γ-T3DMGにも応用可能である.福岡大学の三島等との共同研究により,マウスの中大脳動脈閉塞法による梗塞巣がα-T3,γ-Toc投与により減少することを明らかにし,論文として公表した.引き続きα-T3DMG,γ-TDMGの梗塞巣減少効果を検討中である.本研究に関連して,抗酸化物質の誘導体による薬物送達法についての総説に共同執筆者として参加した.
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