研究概要 |
筆者らは、RC-K8ヒト悪性リンパ腫細胞株とH69ヒト小細胞肺癌細胞株において活性化酸素種を誘導するアントラサイクリン系抗癌剤ドキソルビシン(doxo)がウロキナーゼ(uPA)の発現を誘導することを報告した(Int J Cancer.93:792-797,2001)。マイクロアレイ法を用いてdoxo刺激により発現誘導される遺伝子の同定を行ったところ、uPA以外にIL-8遺伝子が強く誘導された。IL-8の抗原量及びmRNAの発現量ともに上昇していることをH69とSBC-1ヒト小細胞肺癌細胞の2つの細胞株で確認した。IL-8プロモーター領域結合CATレポーター遺伝子を用いた遺伝子導入実験やGel shift assayによりdoxo刺激によるIL-8の遺伝子発現上昇にはPEA3転写因子結合領域が重要であることが判明した。また、RNase protection assayにより新たにdoxoによりmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)遺伝子発現上昇が生じることも判明した。これらの研究結果はInt J Cancer.(103:380-386,2003)に報告した。doxo刺激により活性化されるシグナル伝達経路をwestern blotにて同定し、IL-8発現に関与する経路を様々なMAP kinases阻害剤を用いて検討して新たな知見を得た。マトリゲルチャンバーを用いた末梢血白血球浸潤活性を検討したところ、doxo刺激後のH69培養上清は優位に好中球や単球の浸潤活性を上昇させていることを確認した。 平成12年度から平成13年度にかけ奨励研究(A)(代表者 柴倉 美砂子、課題番号12771476)の助成をうけ検討していた、RC-K8とH69におけるカンプトテシンによるuPA遺伝子発現誘導作用についてもActa Med Okayama. (56:223-227,2002)に掲載された。また、all-trans retinoic acidのPL-21及びNB4骨髄性白血病細胞株における細胞外マトリックスメタロプロティネースとIL-8の同時発現誘導作用についての論文はBr J Haematol. (118:419-425,2002)に掲載された。
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