研究概要 |
赤沈現象の基礎には赤血球凝集があるが,連銭形成を認めた赤血球を有する全血を誘電測定すると,無希釈全血中での連銭形成能の強弱が誘電率に鋭敏に反映される.誘電解析法によれば,(A)連銭,(B)ランダム凝集塊赤血球集合の2つのタイプが弁別できる.(B)は異型血混合時に出現するので,クロス・マッチなど輸血検査の新しい方法として誘電測定法が利用できるのではないかと考えられた. 簡便・迅速にできる交差適合試験の新しい方法を開発し,輸血操作の直前に現場において術者が自ら実施し適合性を的確に確認することができれば,血液型不適合などの輸血事故を防ぐためによい方策と考え,血液の誘電率を指標として赤血球の連銭形成に妨害されることなく血球凝集の有無を高確度に弁別できる自動凝集計を開発を試みた. 同型血混合・異型血混合のそれぞれについての誘電測定系を構築して,その性能テストをおこなった.Yokogawa-Hewlett-Packard 4194Aインピーダンスアナライザを用い,回転円盤型プローブにより各種混合血の誘電測定を実施した.例としてA型の血漿にB型赤血球を加えた場合連銭形成はほとんど無く凝集塊のみのε値を示したが,A型とB型の全血同士を混ぜた場合連銭と凝集塊の両者が混在が確認され,静止時のε値をみるだけでは凝集の確証が得られなかった.しかし,検体に回転による応力をかけることにより連銭を解消してはじめて,全血中での凝集塊形成を確認でき,凝集による正確なε値を得ることができた. 今後は全血による凝集の判定結果を用手法のそれと比較しながら,他の赤血球細胞内構成要素による影響についても検討していく予定である.
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