プラスミド性クラスCβ-ラクタマーゼ産生菌は他のクラスのβ-ラクタマーゼ産生菌に比べ現時点での分離頻度は極めて低い。そこで既に臨床分離大腸菌株よりクローン化してあった新しいプラスミド性クラスCβ-ラクタマーゼ(CMY-9)についてその酵素学的解析と遺伝子周辺領域の解析を行った。その結果、CMY-9は以前に台湾より報告された近似のβ-ラクタマーゼであるCMY-8に比し代表的な広域セフェム薬であるセフタジジムの加水分解効率が優位に高まっていることが明らかとなったが、CMY-9では唯一85位のアミノ酸がCMY-8のグルタミン酸からアスパラギン酸に置換しており、その影響であると考察された。この酵素活性の相違はセフタジジムの最小発育阻止濃度にも2管の上昇をもたらしていた。CMY-9遺伝子は耐性遺伝子などの集積構造であるインテグロンの下流に存在し、インテグロンとの間には遺伝子の転位に関与するトランスポゼーズをコードすると推測される遺伝子が同定された。このトランスポゾン様構造はクラスCβ-ラクタマーゼDHA-1遺伝子や一部のクラスACTX-M.型β-ラクタマーゼ遺伝子でも報告されつつあり、これがインテグロンと複合的に機能し薬剤耐性遺伝子の集積に関与していることが示唆される。 一方、プラスミド性クラスCβ-ラクタマーゼ産生菌のスクリーニングを並行して行ったところ、これまでに臨床分離腸内細菌よりCMY-2、DHA-1の各クラスCβ-ラクタマーゼ産生菌を国内で初めて同定した。新年度はこれら複数の菌株を用い、主にディスク法を用いたクラスCβ-ラクタマーゼ産生菌の簡易判定法を検討する予定である。
|