<研究目的>家族内にドナーとレシピエントを同時に抱える小児生体臓器移植の特殊性により、移植後の家族関係が変調をきたし、さまざまな心理社会的問題が生じている。そこで、生体臓器移植をうけた子どもをもつ家族の家族機能の特徴、ドナーのQOLと健康状態の実態、レシピエントのQOLと効力感の実態について調査を行った。 <研究方法>7施設の外来通院中の生体臓器移植(腎臓・肝臓)を受けた10〜18歳の小児およびドナーである家族を対象に、質問紙調査を行った。調査内容は、基本属性に加え、ドナー用がWHO SUBI40項目、日本語版BDI21項目、FAI30項目、レシピエント用が生活の満足度(QOL)37項目、児童用領域別効力感尺度32項目である。外来受診時に、質問紙を配布し、郵送により回収した。現在も調査継続中である。 <結果・考察>現在のところ、質問紙配布数90組、回収数66組(73.3%)、最終有効回答数52組(78.8%:腎移植後38組、肝移植後14組)である。家族内の凝集性が高く、特に肝移植後の家族の場合、柔軟に対応する機能が低かった。ドナーのQOLは平均点以上の項目が多く、健康状態との関連性はみられなかったが、家族内のコミュニケーションがうまくいっていないと自覚しているドナーの方が、QOLは有意に低い結果となった。レシピエントのQOLは健常児と比較して有意な差はなく、身体症状の程度にも関連がみられなかった。領域別効力感では友人関係と自己の領域において平均点を下回っていた。移植がゴールではなく、生涯にわたり免疫抑制剤の服用や感染予防のための自己管理が必要なレシピエントとドナーを含む家族のQOL向上のためには、家族内の調整能力や問題解決能力を高め、家族の成長・発達を支援する必要性が示唆された。
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