本研究は、寝たきり高齢者の離床を促すことが在宅ケアの重要課題であることから、在宅寝たきり高齢者の離床および座位保持にかかる介護者の介護負担に着目し、その内容を明らかにすること及び効果的な訪問看護の介入を検討することが目的である。 調査対象は、愛知県T訪問看護ステーション利用者のうち、65歳以上の高齢者およびその介護者117組であり、座位保持可能「自立」86名、座位保持「介助」31名の2群に分けて、本人のADL、QOL、介護者の介護状況、健康状態、介護負担感などについて分析した。広義に捉えると寝たきりに該当する座位保持「介助」31名では、座ることに「意欲あり」と答えた人が12名(63.2%)であり、「意欲なし」と比較すると、ADL項目のうち排泄、食事、整髪、口腔清潔の自立度が高く、趣味および楽しみがあると答えている人が有意に多く、離床時間も長かった。そのため、寝たきり高齢者本人の「座る意欲」に着眼して介護者の介護負担との関連を検討した。その結果「意欲あり」の介護者は腰痛の重度者が多かったが、主観的健康状態が有意に良かった。またZarit介護負担感尺度では有意差が見られなかった。従って、積極的に座位を促すことは介護者への身体的介護負担として「腰痛」の悪化が示され、腰痛対策への介入及び適切な介護福祉機器の導入を検討することが重要であると思われた。また、介護者の介護負担軽減への介入だけでなく寝たきり高齢者本人の意欲を引き出すこと、もしくは排泄、食事、整髪、口腔清潔の自立度などのADLレベル向上への介入が、離床を促すケアにつながることが示唆された。 今後の課題は、座位保持およびそれに関連した諸動作にかかる介護者の身体的介護負担の内容をさらに詳しく解析し、どのような訪問看護の介入が介護者の介護負担軽減に有効であるかを検証していくことである。
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