研究概要 |
視覚刺激を与えない状態と与えた状態である静止画像と動画像(歩行速度:4km/h,自動車走行速度:60km/h)で,身体動揺(重心動揺計を使用)を測定した。画像はフェイスマウント・ディスプレイにビデオ撮影をした道路画像を上映し,被験者が道路を前進するように視認できるようにした。さらに視覚に関連して常用視力と動体視力についても測定を行った。また,それにともない老研式活動能力指標や日常生活上で転倒に関連すると思われる質問紙を作成し、聞き取り調査を実施した。 対象群はある地域に在住する65歳以上の高齢者286名であった。この中の老研式活動能力指標11点未満と視力0.3未満の者を除いた204名を分析対象群とした。これは、日常生活が自立していることを基本としていることと、視覚刺激を与えた上で重心動揺測定をおこなうという本研究の要素を考慮してのことである。重心動揺測定は合計3回実施し、通常での30秒間測定(視覚刺激なし)、また視覚刺激として動画像(4km/h,60km/h)をフェイスマウント・ディスプレイを用いて与えの30秒間ずつの測定とした。測定項目は総軌跡長、矩形面積,外周面積,単位時間軌跡長、単位面積軌跡長の5つとした。5項日中、矩形面性,外周面積において、視覚刺激なしと2種類の視覚刺激を与えた場合とで、転倒経験の有無で有意差が生じた(P<0.05)。さらに視覚刺激が強いほど、重心動揺の結果が悪いこと(高値を示した)が分かった。来年度は視力・動体視力を変数に加え,視機能と重心動揺、転倒との関連について,生活環境の相違から検討したい。
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