1.文献レビュー ライフヒストリーアプローチ、看護職のキャリア発達及び行政保健婦・士(以下、行政保健師とする)の活動史に関する文献を渉猟した。ライフヒストリーアプローチを用いた看護研究は国内で年々増加しているが、看護職のキャリア発達をテーマにしたライフヒストリー研究はみられなかった。海外では、看護職のキャリア発達に着目した研究の枠組みにDaltonやBennerのモデルが用いられていた。地域看護領域ではライフヒストリーアプローチにより保健師のリーダーシップについて明らかにした研究がみられた。また、我が国の行政保健師の活動史は、厚生省健康政策局計画課監修「ふみしめて五十年」(1993年)を代表として、先駆的な活動により一時代を築いた保健師の自伝・他伝の形で資料化されていた。本研究においてこれらの資料は時代背景をふまえて保健師のライフヒストリーを解釈するため有用と考えられた。 2.データ収集と分析 今年度は先駆的な公衆衛生看護活動に定評のある60代の退職保健師2名の研究協力が得られた。一人目の協力者(元・町保健師)へのインタビューには本人がまとめた保健活動年表をインタビューガイドとして用い、キャリア発達に関する項目を加えた。インタビューは同意を得てテープ録音し逐語記録を作成し、仕事や私生活での出来事を抽出して年表を作成した。保健師一人設置時代の活動や精神保健福祉活動の展開プロセスに焦点を当て、キャリア発達に関連する要因を分析した結果、「保健師をめざす動機となった人生経験」「活動に対する他者の評価を得る機会の活用」などキャリア発達に関連する要因が見出された。これらの研究成果の一部については学会報告し参加者との意見交換を行った。二人目の協力者(元・保健所保健師)へのインタビューはインタビューガイドを修正し、現在も継続中である。来年度はさらにインタビュー対象者を増やす予定である。
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