1.文献レビュー 今年度は、行政保健婦・士(以下、行政保健師とする)の力量形成と国の施策方針との関連について資料収集を行った。厚生労働省による「地域保健従事者の資質の向上に関する検討会報告書」(2003年5月)では、保健師の現任教育の現状における問題として、人数の多さにもかかわらず配置が分散していることや小規模町村での人材育成が困難なことが挙げられていた。また、厚生労働省健康局長通知「地域における保健師の保健活動について」(2003年10月)においては、現任教育の目的に行政運営に関する能力の養成という考え方が新たに打ち出されていた。 2.データ収集と分析 今年度は二人目の研究協力者(保健所保健師)に対するインタビューを継続した。そして、逐語記録の作成、年表の作成、関連要因の抽出を一人目と同じ手順で行い、関連要因を2名の共通性・相違性に着目して分析した。 3.研究結果および考察 研究協力者は60代の退職保健師2名であった。先駆的な公衆衛生活動領域は2名とも精神保健分野であった。キャリア発達に関連する要因を分析した結果、「保健師をめざす動機となった人生経験」「仕事をもつ女性としての開拓」「地域づくりへの明確な目標の保有」「保健師の仕事に対する家族の支持」「一人で活動を模索することからの学び」「全人格を傾けた個別援助の経験」「活動に対する他者の評価を得る機会の活用」「管理者のリーダーシップ」などが見出された。これらは、初任期に自らの活動実践を意味づける経験の蓄積や保健師個人のニーズにあった研修機会の活用など、経験知に基づく段階的な現任教育プログラムの重要性を示すものであった。
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