本研究は東北地方における保健医療福祉職等を対象に、高齢者の虐待に対する虐待の現状と、保健・福祉職等が困難であると捉えた状況を明らかにすることである。平成14年度は研究者が27名に対して研究者が面接調査を行った。対象者は訪問看護ステーションの訪問看護師、介護老人福祉施設の福祉職、市町村の保健師等であった。研究目的を口頭及び文書で説明し、同意書に署名して調査を行い、面接は1時間を要した。面接は、半構成的面接を行い、テープ録音と筆記により記録をとり、トランスクリプションをした。 あげていた東北地方特有の高齢者の状況では、寒いのに、暖房や保温をしない、または寒い時期だけ街中の家族と同居することがある、農村地区では血縁や地縁で閉鎖的な部分が残っており、家族が高齢者を介護するという気風が残っていた。 面接した事例からは、直接暴力を行っている事例は少なく、家族の介護力の不足や介護に対する考え方、家族間の関係による介護の放棄の型の虐待が多いことが明らかになった。介護保険実施後は介護保険制度の利用はされている。しかし、介護保険制度導入により、手軽に介護サービスを利用できる長所と、介護サービスまかせで家族は最低限しか介護しない家族もある短所が示された。東北地方は寒冷地であることは、体温調節へのケアの必要性と、高齢者の移動の手段のサービスをも考慮する必要がある。また、事例の中で積極的にサービス提供者が関わっていても事態が変化せず、緊急時になって変化したことにより、児童や配偶者間の虐待の対処と同じく、高齢者の緊急時に対応できる法的な根拠や対処方法の必要性があることが示された。 平成15年度には、本年度の面接調査をふまえ、東北6県にわたり、保健医療福祉職等を対象に、高齢者の虐待に対する虐待の現状と.保健・福祉職等が困難であると捉えた状況をアンケートにより明らかにする計画である。
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