精神障害者に対する早期の介入の必要性が唱えられているが、地域には未治療もしくは治療中断のケースが少なくない。医療拒否の強いケースに関しては保健師や民生委員が発見することが多いという報告がある一方でその実態は明らかになっていない。そこで今回は民生委員が在宅精神障害者に関して受ける相談の実態を明らかにすることを目的とした。対象は都内のある地区の民生委員11名から得られた24事例とし、民生委員に対してこれまでに精神障害者に関してどのような相談を誰から受け、どのように対応したか半構成的面接を行った。主な相談者は近隣や本人・家族からであり、相談内容は日常生活の困り事や近隣トラブルに関する苦情であった。民生委員は積極的に役所や保健所、警察等と連携をとり、また精神障害者のみならず家族や周辺の近隣住民への援助もあわせて行っていた。その他適宜様子観察や服薬確認をする中で、幻覚・妄想等の症状に付き合ったり、訴えを聞いて受診を勧める等行うなど、民生委員が在宅精神障害者の再発の兆候を把握し早期に介入することの可能性が示唆された。しかし一方では、民生委員が精神障害者の対応に関して倫理的課題に直面し、ジレンマ状態にあることが明らかになった。ボランティアでありながら、法的に業務が定められているための規制や、住民と精神障害者本人の人権擁護のはざまでの困難を訴えていた。民生委員の活動を行政が公的に支えていくことが必要であると考えられた。
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