精神障害者に関する介入については、より早期に介入すれば後になって起こる能力障害の程度を軽減できると言われている。また様々な研究から、精神障害者が援助を得るまでに遅延がみられることや、これらの患者が医療機関に到達するのが遅れると回復はより遅く不完全なものとなること、また能力障害が病期の早期に進展することが明らかになっている。しかし実際には、精神障害の初期症状がわかりにくいことや、当事者が発病当時は医療を拒否することが多いなどの理由から、地域において家族がひたすら対処しており、早期介入ができていないのが実状である。冨澤(1998)はこのような地域で埋もれがちな、医療拒否の強い事例に関しては保健師や民生委員が発見することが多いと報告し、保健師と民生委員との連携の重要性を述べているが、実際に民生委員が在宅精神障害者に関して誰から、どうような相談を受けているかは全く明らかになっていない。 そこで、平成14年より在宅精神障害者を地域で支える民生委員の活動について研究を行った。その結果によると、民生委員のインタビューから得られた全31事例のうち特に医療拒否が強い「未治療もしくは治療中断」の事例は7例であった。その中には保健所や役所に相談しても解決できず、民生委員が家族とともに仕方なく民間の搬送会社に連絡をして強制的に入院をさせた事例や、精神障害者の行動に異常を感じた民生委員が警察に連絡したにも関わらず対応が遅れて事件に発展した事例などが含まれていた。これらの事例の分析から、民生委員が在宅精神障害者に対して早期に予防的に介入しているにも関わらず、関係職種との連携がうまくいかずに対応が遅れてしまっていることがわかった。また明らかにボランティアの域を超える対応を強いられている事例も多くみられ、多くの民生委貞が精神障害者の事例を扱う際の連携や対応に精神的な負担を感じていることが明らかになった。
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