本研究の目的は、NPOの活動として居住外国人への健康支援活動の可能性とその有効性の評価を行い、ボランティア組織による居住外国人の健康支援システムは、どのようにすれば構築が可能かについて検証することである。平成15年度は、地域の中核病院(病床数455床)で院内診療報酬明細書を用い、平成15年4月〜6月に外来を受診した外国籍者の医療費と、受診した疾患について調査を行った。この自治体の外国籍者は44歳以下が87.8%であるため、0〜4歳、5〜19歳、20〜44歳と年齢区分を設定し日本人と比較を行った。その結果、これまで外国籍者は保険未加入者が多く医療費は高いと言われてきたが、国民健康保険と社会保険の加入者は外国籍者全体の79.3%であり、ひと月1人当たり診療点数は全ての年齢区分で外国籍者は75%タイル以下となった。受診した疾患では呼吸器系が最も多く、先行研究でも呼吸器疾患が多いということであったが、その理由は日本の気候に適応できない、不衛生な環境で生活している、という分析であった。今回の結果では年齢を見ると0〜19歳が多く、これは日本人の結果とも一致しており、外国籍者は若い世代が多いためであると推測された。また先行研究で言われている言葉の問題について、同時期の国民健康保険を利用した外国籍者の医療機関を調査した結果、静岡県内でポルトガル語の通訳がいる医療機関を受診した人はわずか5.6%で、63.2%は通訳のいない居住している自治体の医療機関を利用していた。先行研究から10年が経過しており、外国籍者は言葉の問題については対応できてきているのではないかと推測された。 最終年度である平成16年度は、医療機関を受診していない人々が健康障害を持った時にどのように行動するのか調査して、その結果をNPOと検討してまとめる予定である。
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