本研究は、痴呆高齢者とその配偶者の夫婦のみ世帯におけるケア提供の実態を明らかにし、日米の介護者の介護のパターンを見いだすこと、特に日本に特有なパターンを見いだし、日本の痴呆高齢者の在宅ケアシステムのあり方を探ることを目的とした研究である。対象者は、在宅で痴呆症状をもつ夫または妻を介護する者10名であり、半構成面接によりデータを収集した。これらのデータは、すでに米国で進行している同じ目的の研究で作成されたコードブックを基にしてコード化した。さらに日本特有の介護パターンを特徴づけるコードを新たに作成した。 コードは、ケア提供の状況、ケア提供者のニーズ、ケア提供者のセルフケア、学んだ教訓の4つの側面から分析した。日米ともに、痴呆の症状をもつ配偶者との固い絆を確認しつつ、共有できる活動を楽しみ、日々に感謝するパターンが見られた。また、介護者自身が健康を維持するために、運動や気晴らしなどを心がけていた。米国に特徴的なパターンは、法的サポート、特に財産の保護などについての情報やサポートを求めていることであった。日本に特徴的なパターンとしては、夫や妻の介護をすることを自らの運命として受け入れ、介護保険等の公的サービスを受けながら介護を続けていることであった。また、日本の介護者は、常に他者との比較により介護する苦痛と折り合いをつけていた。さらに、経済的に困っていないことが、介護者が介護の肯定的側面を見いだす際に重要な要素であった。 日本の介護者が他者との比較で介護を肯定的、否定的に捉えていたため、より肯定的な意識を持ちながら介護をしていくためには、介護者同士のピアサポートの充実の必要性と、専門職が介護者同士の関係づくりの橋渡しをする機能の必要性が示唆された。 15年度は、痴呆高齢者本人の病気や介護者である妻や夫への思いを明らかにすることにより痴呆高齢者の在宅ケアシステムのあり方をさらに探求する。
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