1.在宅療養中の遷延性意識障害者1名(40歳代、女性)を対象とし、家族に承諾を得た上で研究を開始した。測定用具として遷延性意識障害度スケール(広南スコア)とデジタルカメラ及びデジタルビデオカメラでの撮影を行った。背面開放端座位ケア導入後、約1年半となるが、導入前63点だった広南スコアが導入約200日目を境にして1点ずつだが低下し始め、約489日目にて55点にまで改善した。これは呼びかけに対して目の動きが認められたこと、表情が穏やかになり微かな笑顔が認められたこと、唾液を嚥下する動作が認められたことが点数低下に繋がった。また広南スコアでは評価できない変化として目つきの変化が認められた。一方、日々の背面開放端座位ケア前と最中の広南スコアには変化がなかった。これらの事から毎日のケアの中で瞬時には変化は認められないが、日々ケアを重ねていく中で少しずつ変化が認められていったと考えられる。この広南スコアにおける変化の様相は、先行研究結果を支持する内容であった。 2.療養型病床群及び脳神経外科病棟をもつ計3施設にて研究承諾を得、2施設において研究を開始した。現段階では療養型病床群において3名の患者のデータが収集できている。3名のデータ結果は以下のように3様であった。1.日々の背面開放端座位ケア前・中のスコアにおいて、ケア前より明らかにケア中の方が点数が低く、日数を重ねるごとにケア前・中とも点数が低下していく事例、2.日々のケア前・ケア中のスコアには変化はないが、日数を重ねていくにつれて点数が僅かながら低下していく事例、3.日々のケア前・ケア中のスコアに変化もないが日数を重ねたスコアにも変化がない事例が認められた。 背面開放端座位ケアの導入により在宅療養者、入院患者を合わせた4例中3例は、広南スコアの視点から何らかの意識レベル改善を認めた。更に今後例数を増やし、導入によって遷延性意識障害者の意識レベルがどのような形で改善していくか、その様相をタイプ別に分析することと、ビデオカメラ撮影のデータも今後分析する予定である。
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