1.がん患者のリンパ浮腫を予防・軽減するために看護師に必要な知識・技術に関する研究 がん治療を専門的に行う総合病院勤務の看護師のうち、研究の承諾を得られた96名に質問紙調査を行い、51名から回答を得た(回収率53.1%)。対象の内訳は、看護師経験年数は平均5.0年、リンパ浮腫予防の説明経験がある者70.1%、リンパ浮腫のあるがん患者と関わった経験のある者78.4%であった。リンパ浮腫の予防について、対象者の60%以上は、感染予防等日常生活上の注意点に関しては患者に十分説明するが、弾性衣類やセルフマッサージに関しては、説明する者としない者がほぼ半数ずつであった。また看護師は、患者のリンパ浮腫予防の認識が低い時期に、適切な知識・技術に基づく説明ができないことを困難に感じ、さらに、終末期患者のリンパ浮腫への援助を困難に感じることが明らかになった。 2.がん患者のリンパ浮腫を予防・軽減するための長期的な看護援助に関する研究 平成14年度「リンパ浮腫のあるがん患者の日常生活上の困難と対処に関する研究」のがん患者12名への面接調査から、患者は、がんの罹患やボディイメージの変化による衝撃が大きいために、医療者からのリンパ浮腫に関する説明を具体的に理解するには至っておらず、説明された内容も覚えていないことが明らかになった。このことは、患者が、浮腫の軽減する初期の段階にリンパ浮腫に気づくのを遅らせ、さらに自分なりの方法で対処するうちに浮腫が次第に増悪したことが推測された。また、患者は、治療後平均30.8ヶ月でリンパ浮腫に気づくことから、定期受診の間隔があいてからの浮腫発現が多く、痛みや蜂窩織炎の激烈な徴候がなければ医療機関を積極的に活用していないことが明らかになった。看護職者は、患者の入院中には適切な知識・技術に基づく浮腫予防に関する説明を行うと共に、外来では、治療後少なくとも3年間は患者の浮腫初期徴候を慎重に観察する必要がある。
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