I.14年度は、本研究の初段階として、結婚前の女性と妊娠中の女性にターゲットを絞り、その被養育体験と自分がするであろう育児のイメージについて質問紙調査を行し、その結果を日本母性衛生学会(旭川)にて発表した。 目的:妊娠中の女性と未婚の女性について被養育体験と育児のイメージとの関係を明らかにする。 方法:対象は産科開業医にて妊婦健診を受け妊娠継続を希望している女性と、未婚の女性として19歳から23歳までの大学生とした。研究の説明を受けた上で参加に同意をした女性に対して、質問紙調査【1)基礎データ(年齢、職業、家族形態、等)、2)被養育体験23項目の有無及び養育者の評価、3)結婚、子どもができること、育児についての考え方や実際、4)パートナーの育児について、以下は妊婦のみ→5)パートナーの育児以外の態度について、6)夫婦間調整テスト(日本語版)】を実施した。質問紙は郵送にて回収した。 結果:妊婦・学生各27名、合計54名から回答が得られた。その分析の結果、妊婦、学生とも27名中1〜2名が殴る、蹴るなどの程度のひどい身体的虐待を親からしばしば受けた経験があるという実態が明らかになった。精神的虐待はどちらも身体的なものより高い頻度で経験していた。そして、育児については、学生は妊婦に比較するとイメージが漠然としており、妊婦はともに育児をする相手としてのパートナーとの兼ね合いや子どもの気質も含めたイメージをしていることが多くより具体的であった。また、虐待を受けた経験のある女性では、自分は同じような育児はしたくないと考えているが、その時にならないとわからない、という不安も表していた。被養育体験を肯定的に捉えている女性の多くは、自分が受けた育児と同様の育児を自分の子どもにもしたいと考えていた。 II.本年度は8月にカナダのバンクーバー州におけるDVへの取り組みについて視察を行った。州立女性病院の病院長及びDV対応プログラムのコーディネーターに、プログラムの研修内容や実際のDV被害者への対応のポイントなどの説明を受けた。視察内容についての報告会を1月に行った。
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