I.15年度は、昨年度研究協力の得られた同じ対象群で出産後、育児を体験している女性に対して、夫への期待と実際に行なわれたこと、夫婦関係の妊娠期からの変化などについて質問紙調査を行った。その結果は日本母性衛生学会(栃木)にて発表した。 目的:子どもが1歳未満の育児期において、夫の育児や家事への関わり方を妻がどのように感じているかに焦点に当て、妊娠期からの夫婦関係にどのように影響しているかを明らかにする。 方法:対象は産科開業医にて健診を受け妊娠継続を希望し出産した女性とした。研究の説明を受けた上で参加に同意をした女性に対して、質問紙調査【1)基礎データ(年齢、職業、家族形態、等)、妊娠中に得られたデータの確認、2)パートナーの育児の実際について、3)パートナーの育児以外の支援の実際について、4)夫婦間調整テスト(日本語版)】を実施した。質問紙は郵送にて回収した。 結果:25名中17名からの回答が得られ、その平均年齢は妊娠期において28.5歳、育児期29.2歳であった。夫婦間調整テストの結果は、妊娠期119.7(96-148)点、育児期111.7(51-149)点であった。得点が60点以上下がった者が1名、30点以上下がった者が3名、逆に30点以上あがった者が2名であった。得点の下がった者は、「口では協力的なことを言っていたがいざその時になってみると何もしてくれない」「子どもに対する愛情表現が乏しい」などの意見を述べていた。 II.本年度は他に子どもの立場での両親の夫婦関係の影響について、女子大学生プレテスト的に調査を行った。その結果は、日本子どもの虐待防止研究会・京都大会にて発表した。 対象者の女子大学生の平均年齢は20.4、父53.2、母49.9歳であった。子どもの立場から見た両親の幸せの程度(以下、幸せの程度、とする)について、一般的な幸せを中心とした「とても不幸」から「とても幸せ」までの7点リカートの問では、5名が中央より不幸の側に回答していた。母親が結婚しなければよかったと言っているかどうかでは、「よくある」「時々ある」が合わせて7名、父親では2名であった。ほとんどの学生は両親の夫婦関係から自己の結婚観や育児観が影響を受けていることを自覚していた。両親の不和から子どもが得る情報は、結婚に対する不安や消極的な育児(〜しない)のイメージであった。本研究は来年度、データ数を増やし本試験に入る予定である。
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