本研究の目的は、Bowlby(1969)による愛着の世代間伝達のメカニズム(内的ワーキングモデル理論)に着目し、妊娠期の母親の内的ワーキングモデルと胎児愛着得点を用いて、将来の母子関係を予測するためのスクリーニング法を開発することである。 今年度はまず、母親の内的ワーキングモデル及び児への愛着の測定方法を検討した。その結果、妊婦の内的ワーキングモデルは1991年、宅磨・戸田によって開発された内的ワーキングモデル尺度、児への愛着はオリジナル版胎児愛着尺度を使用することにした。胎児愛着尺度の信頼性・妥当性について検討を行った。 平成14年11月より、妊娠期の母親を対象とした第1回目の調査を開始した。 調査項目は、妊婦の基本的属性および生育背景、内的ワーキングモデル尺度、PBIスケール、胎児への愛着スケールである。3施設、350人に配布中であり、現在約60名回収されている。回収者のうち約50%の妊婦から産後の縦断調査への参加協力の意思が得られている。 現在、データ収集中であるため目的とする結果は得られていないが、質問紙の自由記述欄からは、「産後、育児にイライラするのではないかと心配」「上の子どもに声をあげたり、手をだしてしまう」など、妊娠中から育児に何らかの不安を持っている妊婦の存在が抽出された。 今後、平成15年9月までの出産予定日の妊婦を対象に、妊娠期のデータを収集すると同時に、縦断調査の対象者に、産後3か月、産後1年の時点で質問紙を送付し、追跡調査を行っていく予定である。
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