本研究の目的は、Bowlby(1969)による愛着の世代間伝達のメカニズム(内的ワーキングモデル理論)に着目し、妊娠期の母親の内的ワーキングモデルと胎児愛着得点を用いて、将来の母子関係を予測するためのスクリーニング法を開発することであり、妊娠期から産後1年までの縦断的調査を行う。 平成14年11月より妊娠期の母親を対象とした第1回目の調査を開始し、現在約90名回収されている。このうち約3割の対象者から産後3か月および1年時点での追跡調査に参加協力の意思が得られており、それらに対して継続的にデータ収集を行っている。 調査項目は、妊娠期と同様の内容(褥婦の基本的属性、内的ワーキングモデル尺度、PBIスケール、乳児への愛着スケール等)である。 現在、データ収集中であり目的とする結果は得られていないが、本調査で使用した胎児愛着尺度については、信頼性は高く保たれていた(クロンバツクα>0.8)。一方、愛着尺度の妥当性については、因子分析において構成概念妥当性が支持されず、再度検討する必要が出てきた。この原因としては、本調査に参加した対象者の特性として、元来母子関係について関心の深い集団であるという偏りも考えられるが、尺度の質問項目自体に問題はないか、再度検討する必要があると思われる。 妊産婦の背景と児への愛着との関連、またその他の因子との関連についてはまだ分析を行っていない。 また、スクリーニングを可能とする量的分析を行うために、調査フィールドを拡大しデータ数を増やす必要がある。
|